昔から日本には、親から子へ言い継がれる教訓めいた言い伝えがたくさんあります。
みなさんも子供のころに、一度や二度は聞いたことがあるでしょう。
その中の一つ、「雷が鳴るとおへそ取られるよ」というもの。
夏場の落雷が多い時期に、大人から言われたことでしょう。
そもそもこういった言い伝えは、なぜ言い伝えられるようになったのでしょうか。
また、その言い伝えの由来や元になる出来事が何かあったのでしょうか。
どうやら言い伝えには、私たち日本人特有の民族性や歴史といったものとかかわりがありそうです。
ここでは、雷が鳴るとおへそを取られるという言い伝えができた理由を、3つお伝えします。
日本古来の神話から
1つ目は、日本古来の「雷様」と呼ばれる、日本の民間信仰や神道における雷の神の偉大さを表すものとして、言い伝えが生まれたという説です。
古事記では、雷神は日本神話に出てくるイザナミという子供をたくさん産んだ女神の体にとりつき、黄泉の国でイザナミの体を燃やしたとされています。
「雷が鳴るとおへそを取られるよ」という言い伝えの、おへそがどこから出現したかは定かではありません。
しかし、農耕民族の日本では、雷様を怒らせてはならないという地域が多くありました。
おへそを隠すように前にかがむと頭が下がるため、雷様に頭を下げているように見えます。
こうして雷神の怒りに触れないように言い伝えが広まったということです。
雷が落ちた遺体から
これも誰が見たのか、そもそも本当にそんなことが実在したのか、だれもわからない神話めいた話です。
雷が落ちて焼け焦げた遺体は、へそがえぐり取られたように見えた、という説から、言い伝えができたという話があります。
そもそも、雷が人に落ちたら必ず焼け焦げて死ぬわけではありませんし、そんな遺体を誰がどこで発見したのかも定かではありません。
また、雷神が出る書物に、へそを取るとか、人間のへそを集めるといった話は出てきません。
教訓から
雷が多く発生する季節は、寒暖の差があったり、急に気温が下がったりと、体が冷えやすいと言えます。
そこから、子どもが体を冷やさないようにという思いが教訓になって、「雷が鳴るとおへそ取られるよ」という言い伝えになったのではないか、という説です。
古来より日本では物事を遠回しに言い表す習慣があり、子どもへの「お腹を出してると冷えるわよ」という注意喚起が遠回しに言い伝えになったのかと思われます。
また、実際に雷が鳴っているときに、おへそを隠すように前かがみになって頭の位置を下げることで、落雷の可能性を避けるという目的もあったのだと思います。
日本には、このほかにも鬼や妖怪を用いた教訓が多くあります。
欧米のようにストレートに言う習慣のない日本ならではと言えますね。
まとめ
さて、雷が鳴るとおへそを取られる言い伝えが現代に言い伝えられるようになった理由を、3つお伝えしてきました。
みなさんがご存知の話もあったかもしれません。
どの理由が正しいのか、定かではありませんが、医学が発達する前の日本では、ちょっと風邪をひいただけでも死に至る怖い時代でした。
子どもであれば抵抗力が弱く、生存率はなおさら低かったことでしょう。
当時からあったこの言い伝えは、小さな子どもを病気から守るための知恵だったのかもしれませんね。
また、おへその周りには体を構成している臓器が集中しています。
おへそを守るようにしてかがむことで、落雷から身を守るだけでなく、体の中でも重要な臓器である心臓や、おへそ周りの内臓を冷やさないようにする効果があったのでしょう。